唄に寄り添うもの…2(追記あり)

それで、今回の沖縄行きでは「三線」をいろいろ見てみよう。
三線屋さんをいろいろ回ってみよう、と。
どうせ台風3号の影響であちこち出歩いたり出来ないだろうし
と思って那覇空港に到着してみればホントにものすごい嵐で
飛行機の着陸があと10分延びたら確実に吐いていたであろう。


で、結局のところ2軒の三線屋さんしか回ることが出来なかったのだが
(天気も悪かったしね)
宜野湾の『又吉三線店』での店主・又吉さんのお話は実に興味深かった。
又吉さんは、先人が創り上げた三線という楽器の偉大さを
正確に復元することを心がけている。
三線と一口にいってもいろいろな型があり
その中で最も名器と言われている開鐘(けいじょう)をはじめとする
あまたの三線制作の技術をとことん突き詰めて極め
精神世界の高みにまで達したところで語られる。
それは自分のようなまだまだ唄三線世界の入り口に立ったばかりの
ヒヨっ子には到底理解し切れるものではないのだが
又吉さんは平易な言葉を用いて、
先人が築いた素晴らしい三線文化について解いてくださった。
「見本用に作るくらいなら、オーダーを受けている三線制作に心血を注ぎたい」
とのことで実際に又吉さんが作った三線の音を聴くことは出来なかったのだが
精神、肉体ともに厳しい修練の中で手にした
確固たる技術に裏打ちされた言葉のひとつひとつに
「この人の作った三線の音色を聴いてみたい」
と思わせるものがあった。
お話好きな又吉さんではあるが、けっして名工と言われる人にありがちな
一方的に持論を押し付けるだけ、というような不快な感じはなく
こちらの話にもしっかりと耳を傾けていただき
楽しくも豊穣な時間を過ごすことが出来た。
自分が自宅兼工房兼店舗(といっても本当に普通の民家の離れが工房になっているだけなのだが)
訪ねたときには又吉さんひとりしかおらず
ご自身でコーヒーを入れてくださり
「妻が居ればもっと美味しいのが入るんだけど」
とおっしゃっていたが
奥さまや息子さんが帰られて夕食を取っている間も
自分を相手に話し続ける又吉さんは
本当に三線が好きで好きで仕方がないのだなあという感じだった。


(追記)
ちなみにこの『又吉三線店』は『レキオンという奇病』のとっしぃどのに教えてもらった。
彼は実際に又吉さんに三線のオーダーを入れている。
製作中の彼の三線の棹を手にとって触りまくってやったぜ(笑)。
ウソです、いや触ったのはホントだけど。
とっしぃどのは三線教室に来ていてエイサーでも仲間であるので
三線が仕上がった暁には、是非音色を聴かせてもらえたらと思っている。


『レキオンという奇病』2006/4/18(火)記事「あこがれの三線」