『深呼吸の必要』

エイサー仲間のA達にズーッと借りっぱなしになっていた本作品、
やっと観れました。


なかなかよい映画だった。
もうちょっと個々の人物を掘り下れば
なぜ「深呼吸」が「必要」なのかが
判りやすく浮き彫りになったのではないか。
都会の生活に疲れたりなんかした若者たちが
たどり着いた「沖縄の離島」での「援農体験」。
これがどのように作用して彼らの「深呼吸」たり得たのか。
映画はそこにはあまり突っ込んでいかない。
そこが説明されるのは谷原章介演じる挫折した医師と
成宮寛貴演ずる挫折した元高校球児のエピソードだけだ。
でもそれ以外の子らもしっかり成長していくし
脱走した子もベタに帰って来るし(笑)。
取り立てて斬新さはないが丁寧に作られているなという印象。
しかし、谷原章介さんは伊藤甲子太郎(『新選組!』)そのまんま(笑)。
おばぁ役の吉田妙子さんは沖縄映画の常連ですね。
『豚の報い』の旅館のおばぁとほとんどおんなじ感じなのが微笑ましい。
でも『ナビィの恋』のユタ役の時は
またキャラが違っててさすが女優さん!と思う。
「掘り下げてない感」は、それが悪いということではなく
あえてそうしているのであれば
それはそれでコテコテになり過ぎず心地よいかなと。
ワタクシ的には好感が持てた。
サトウキビを刈る時の動作の時間経過の中に
登場人物同士の関係の変化が
さりげなく、しかしきっちりと表現されているところは
細かいところまで行き届いているなあと感心。
やはり「リアリティの神はディテールに宿る」のである。


A達は「あんな可愛い子が3人も揃うわけがない」と怒って(?)いたが
そーんなにすごく可愛い!ってわけでもないけど
平均的に可愛い女の子が揃ってますね。
いいじゃん、映画なんだから。


だいたいあんななーんにもないところに
女と男が同じ部屋に放り込まれて
色恋沙汰にならないのが不思議といえば不思議ですが
そっち方面に話が逸れなかったのは結果的によかった。
色恋系に流れてたらこの爽やかな後味は得られなかっただろうなあ。


A達は援農隊のリーダー格である「田所豊」が「ムカつく」と言っていたので
へー、そういう役どころなのかなと思ったが
どういう点でムカついたんだろう?
「田所豊」は援農のベテランで、若者たちのリーダー役。
だから若者たちにけっこう厳しいことを言うし
援農しながら生きていることに
プライドとちょっとした屈折感がない交ぜになっている。
A達は年齢的にやっぱ若者たちに感情移入するんだろうねえ。
ワタクシ的にはどうしたって都会からやって来たイマドキノワカモノに
サトウキビ刈りの厳しさを教え込んでいくおっさん的役どころの「田所豊」ですわな。
だってもう「イマドキノワカモノ」にはなれないもの〜。


結局、なぜ「深呼吸が必要」なのか、というテーマにたいして
「ああ、そういうことか」というほどの回答は得られませんでしたが
観終わった後、深呼吸がしたくなったことも事実。
ま、それでよしとしよう。


しかし、なぜエンディングがマイリトルラヴァーなんだろう…。


農隊は自分も応募しようと思ったことがありますが
この映画を観て「やっぱり腰痛持ちのおいらには無理」と思いました…。

深呼吸の必要 [DVD]

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※追記
この映画で面白いのは香里奈演じる主人公(だよね?)は
まるっきり成長しない。
成長しないというか、最初からいい子だし。
最後までそのスタンスは変わらない。
ナビィの恋』の福之介みたいな感じ。
狂言回しですらない、傍観者。
その爽やかないい子ぶりが
それぞれのキャラクターが島に持ち込んだ毒を消す
浄化剤のような役割を果たしている感じ。
その意味ではもっと周りの毒が強くてもよかったのかも。