まぐろとエイサー

いや、帰るわけには行かない。
なぜなら三崎に来たのはまぐろを食べるためではなく
エイサーの出演があるからなのだ。
というかエイサーの出演が本来の目的だったのだ。
それがなぜか横横道路を走っている間に
目的が「まぐろ」に転化してしまったのだ。


そんなわけでしかたなく
まぐろパワーを手に入れ、LP(ライフポイント)のUPした男たちは
手に手に太鼓、三線を持ち、
ボードウォークでビールをあおっていた波と戯れていた女たちは衣装に着替えて
バスロータリーに向かった。
会長の指笛イッパツで演奏が始まる。
炎天下太鼓の響きにも力が入る。
なにしろまぐろパワーがみなぎっているのだ。
先ほどまぐろを食べた店の方たちも
店先に出て来て演舞を眺めている。
太鼓よ響け!まぐろよ踊れ!めじまぐろなら値段も安い!
保冷剤も入れてくれるから持ち帰りもOKだ!


本番は夜のステージである。
三浦市民ホールで行われる
海潮音」という音楽イベントへの出演がメインなのだ。
バスロータリーでの演舞はそのデモンストレーション。
控え室で待つ間、今度はまぐろの刺身の大皿が振舞われる。
三崎に来てよかった!
スタッフの方がたもとてもよくしていただいた。
コーラ中毒の会長は狂ったように差し入れのコーラを飲み散らかしていた。


そして本番。
こうしたホールでやる場合、
お客さんの方がエイサーや沖縄芸能に慣れていないことが多い。
だから最初は皆、緊張した面持ちで聴いている。
あの大太鼓の音には圧倒されてしまうのだ。
だから間にMCをはさみ、最後の曲では一緒にカチャーシーしましょうと言うと
少し緊張が溶けて頬が緩む。
手拍子を促してリズムに乗ってもらえれば
どんどん表情が笑顔になっていく。
そして最後はカチャーシー
みんな楽しんでくれている。
とってもいい笑顔。
これが見たくてやってるんだよねえ、こちとら。
道ジュネーの張り詰めた空気とは違う
穏やかで優しい空気が会場を包む。
弥勒世果報はなまやここにある。
これはこれでアリ。