ちょっと怪談…?第2夜

いまから10年近く前の話。
深夜まで出版社で打ち合わせしてダメ出しに凹み頭は冴え…
ここはいっちょクルマぶっ飛ばしてスカーッとすっか!なんてことで
神保町から首都高に乗り、3号線→東名→小田原厚木とノンストップで走り
国道1号線をガーッと登って行く…なんてことを昔はよくやっていた。
若かったんだなあ。体力があったんだなあ。
我がユーノスケ号も当時はもっとシャキッとしていたし


その日は12月に入ったばかりの寒い夜だった。
1月に入ったら箱根は凍結して危険だから
その年は走り納めかもなあなんて思いながら
1国→138→長尾峠箱根スカイラインと登って行った。
箱根スカイラインをガシガシと走って(へたくそだから「攻めて」とは言わない)
少し休憩しようと思い箱根スカイラインの終点近くにクルマを停めた。
エンジンを停めてクルマから降りると
月明かりが富士山を照らしてそのシルエットが浮かび上がり
とても幻想的で美しかった。
時期が時期だけに虫の音もなく、まったく無音の世界。
街灯ももちろんない。他に走るクルマもない。
月明かりのみの闇の中でぼんやりと缶コーヒーを飲む。
はあ〜、世界中にオレ、ひとりぼっち(なわけない)。


ふと、芦ノ湖スカイライン方面からヘッドライトがふたつ、
こちらに向かってくるのが見える。
自分がいる所は芦ノ湖スカイラインの出口料金所からわずか数百メートル。
「あれ?こんな夜中に芦ノ湖スカイライン通れるのか?」
芦ノ湖スカイラインは有料道路で夜間は閉鎖になる。
(箱根スカイラインは夜間のみ無料になって通れる)
料金所があって夜間は通れないようにゲートがかかっている。
そのヘッドライトはスーッとゲートに向かって進んでくると
そのままスピードを落とすこともなく、料金所をすり抜け
こちらに向かってくる手前の道を折れて芦ノ湖方面に下りて行った。
「おお、ゲート開いてるんだ!」
では、夜の芦ノ湖スカイラインを走り抜けて
箱根新道に入って小田原に下りて帰ろう。
そう思ってすぐにクルマに乗り込んで
芦ノ湖スカイラインの料金所に向かったわけです。


ところが…。
ゲートは閉まっていた…。
さっきのクルマは確かにスピードを落とさずに料金所を通り過ぎたのに。
料金所のゲートはしっかり閉まっていて通り抜けるほどなど不可能。
ここをもし通り抜けるならば
少なくとも一度停まってゲートを開けて
料金所を通り抜けてからもう一度停まってゲートを閉めて…
という動作をしなければならない。
さっきのクルマにそういう動きは皆無だった。


あわててクルマに乗り込んだ自分はUターンして
さっきのクルマが下りて行った芦ノ湖への道を飛ばした。
だが、かなりのペースで走ったがいくら走っても
1台のクルマにも追いつかなかったし停まっているクルマにも
対向車線を走ってくるクルマにも行き合わなかった。
ヘッドライトの感じではパジェロのようなRV車で
そんなに飛ばしているようにも見えなかった。
だんだん気持ちがパニックになって来たので
落ち着かなきゃ!と路肩にクルマを停めた。
しかし考えれば考えるほど腑に落ちない。
次第にイヤな汗が出てきた。


あのクルマはいったい…。