『美しい夏キリシマ』

黒木和雄監督による「戦争三部作」のひとつと言われる
美しい夏キリシマ』を観ました。
終戦直前の宮崎県の片田舎での人間模様を
美しく叙情的な風景とともに描き出します。
前回観た『父と暮らせば』のように強烈な反戦メッセージはなく
戦争という過酷な状況に翻弄される人びとが
かなり引いた目線で描かれてるように思えます。
戦争中といっても地方の農村が舞台なので
苛烈な空襲があるわけでもなく
本土決戦に備えた日本軍が駐屯して
軍事教練が行われているていど。
たまにそんな日本人たちをあざ笑うかのように
グラマン戦闘機の編隊が飛んで来るけれど
直接的な戦火は映像には描かれません。
あくまでも淡々と終戦に至る1ヶ月間の
人々に起こる出来事を映し出します。
そこに出て来る人間模様は少し滑稽ですらありますが
あまりに淡々としていて
時系列が読み難いのと人間関係の把握に時間がかかって
「笑える」というところまではいかなかった。
そして結局のところ監督のメッセージはどこにあるのかを
読み取るのが難しかったです。
少なくとも『父と暮らせば』のような
明確な「反戦」メッセージは読み取れなかった。
もちろん「反戦映画」でなければならないというわけではないのですが。
主人公の少年の「心の痛み」みたいなものも
あまり伝わって来なかったのは残念。
ちなみに主人公は柄本明のご子息。
小田エリカのピュアな演技に注目。
石田えりのエロス健在!


美しい夏キリシマ』と『父と暮らせば』は
それぞれに良い点、残念な点があり
2作品をミックスしたらちょうど良い作品になるのではと思いました。
こんなこと言ったら監督さんには大変失礼ではありますが。
映画雑誌の権威『キネマ旬報』では年間ベストテン第1位になった作品。
だからって訳ではないけど、観ておいて損はないと思いますYO。
キリシマっちゅう所に行ってみたくなりました。
これって映画の大事なところだと思うんだよね。

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