まったり旅行記5…内地時計を持ち込むな

瀬底島から安波に行こうと思った。
安波と書いて「あは」と読む。
沖縄県国頭村安波である。
沖縄の人に「安波に行きたい」というと
「あそこは何もないよ」と言う。
「なぜそんなところに行きたいのか?」と問われる。
沖縄民謡に『安波節』という唄がある。
 
 
 安波ぬまはんたや 肝(ちむ)すがり所(どぅくる)
   うくぬ松下(まちしちゃ)や 寝なし所


 (安波のまはんた(という場所)は 心を通わす場所
  奥の松下は 身を通わず場所)


この唄、どこの民謡教室でもだいたい最初にやるんだけど…。
なんておおらかな唄なんでしょう。
古典の大家と呼ばれる大先生も
市井の沖縄民謡愛好家も
ゆったりとしたリズムに乗せて
みなこの唄から沖縄民謡生活が始まる。


この唄の意味を知ったとき
古典だのなんだのと、どんなに格式ばったところで
人間のやることってのはメシを食うことであり、愛し合うことでしょ、という
南の島のおおらかさを感じずにはいられなかった。
非常にプリミティブな人間の営みがそこにある。
一見気難しげだったこの唄がいっぺんに好きになった。


だから、そんな『安波節』が生まれた場所に行ってみたかった。
何もないならないナリに
「何もないなあ〜」ということを実感してみたかったのだ。
だが、時間が足りなかった。
瀬底島で興に乗って歌い過ぎたのだ。
夕方には宜野湾で友達と待ち合わせをしていたのだ。
アイツが引き止めたのかもな。
だから安波探訪は諦めざるを得なかった。
途中までクルマ飛ばしたんだけどね。
あわてて言って写真だけ撮って帰ってくるみたいなのは
なんだか違うような気がして途中で辞めた。
「ここは沖縄だよ?ノンビリしなよ。また来ればいいじゃん。」
誰かが耳元でささやいた。
内地の人間は内地時計を持ち込んで沖縄という島を駆け巡ろうとする。
なぜせっかく沖縄に来ているのに島時間に体内時計をセット出来ないのか。
なんだか白いレンタカーを運転していて悲しくなってしまったのだよ。


だから途中で引き返して古宇利島に立ち寄って宜野湾に向かった。
古宇利島はとってもよさそうな島だった。
鶴見の沖縄料理屋『古宇利島』のマスターに報告しなきゃ。 
島の入り口のドライブインで休憩して引き返したんだけど。
ドライブインで紅いもアイス食べて
おなか冷えてトイレに駆け込んだんだけど。
又来る予感…。