『父と暮らせば」(DVDで鑑賞)

終戦から三年。
広島で原爆後遺症の恐怖に怯えながら、
そして原爆で家族を失いひとり生き残ったことを恥じながら生きる娘。
その娘の幸せを思うあまり死んでからも幽霊となって
娘の側に寄り添い続ける父親。
娘役は宮沢りえ
彼女の奇蹟のような透明感と儚さが
よりいっそう物語の悲しさを引き立てる。
このところの宮沢りえはホントにスゴい。
消えてしまいそうな脆さと独特の浮遊感、
それに他に替えがたいどっしりとした存在感が同居して
凛として健気で。大絶賛じゃん!
いや、だってそのくらいスゴいんだもん〜。
ひとりで芝居の稽古のシーンのときの宮沢りえに注目。
ホント、ドキドキしますから。


父親役は原田芳雄
無骨でひょうきんな父親役を好演し
重たくなりがちな題材に温もりを添えます。
カッコイイなあ。こういうおっさんになりたい。


映画は元々井上ひさしの舞台だったものを
スクリーンに起こした感じで
ほとんど父と娘の二人芝居。
それだけに映画的ダイナミズムに欠けていたのは残念。
せっかく映画を観たのだから「映画ならでは」のなにかが欲しい。
(家でDVDで観たワタクシが言うのもなんですが)
それでも監督のメッセージは痛切に伝わって来る。
監督自身のどこに落としどころを見つければよいのか
わからないくらいの激しい怒り。
それがこの映画の良さでもあり弱点でもある。
確実なのはその弱点を差し引いてもなお
主役の二人の演技に支えられて
この映画は観る価値があるということ。


いずれ第二次世界大戦のことを知っている世代が
この世の中からいなくなったとき、
そのときにもこういう映画は作られるのだろうか。
観終わってからふと思ったのであります。

父と暮せば 通常版 [DVD]

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