2007夏・沖縄…その3『小浜島』

hacchaki2007-09-27

八重山に行くのはなんと15年ぶり。
その間沖縄には何度も行っているのに
ずっと本島ばかりを巡っていた。
これまで八重山民謡にあまり意識が行かず
本島の民謡を勉強するので精一杯だったことが
その原因として大きい。
そこで今回は石垣島を起点として
小浜島鳩間島、黒島と渡ってみることにした。
各1泊ずつしかできないので
何がわかるということもないのだけれど
とりあえず行ってみようと思った。


まずは、小浜島
言わずと知れた『ちゅらさん』の島。
要所要所で『ちゅらさん』関係の物が目に入る。
といっても結構島は広く
それにたいして人口が少ないので
全体的にのんびりした空気が漂っていた。
とくに島に訪れたのが旧盆明け。
この日は旧盆の後夜祭のようなものが各島で行われており
一般的に「旧盆は3日間」という意識で島に渡ると
島内のお店の大半が休みで大きな誤算ということになる。
後夜祭というのは島によって異なるようだが
小浜島では「にんぶちゃー(念仏者)」の集団が
三線、鐘、笛を鳴らして唄いながら各家々を一日かけてまわり
旧盆うーくい(送り)の日にグソー(後世=あの世)に
帰り損ねた霊たちを追い払う。
そして夜になると名主の家の庭に集合し
ひとしきり唄い踊った後獅子舞で盆を締めくくる。
この祭りに遭遇できたことは全くのラッキーだった。
八重山の島々はそれぞれに芸能が盛んで
島ごとに独特の芸能が継承されているが
その一端をかいま見ることが出来たのは素晴らしい体験だった。
黒い着物に赤い帯を締めた集落の古老たちを
若者たちが大切に敬いながら祭りを進めている様子が
内地に失われてしまったものを教えてくれているような気がした。
以前那覇の民謡酒場『島思い』で出会った男性が
小浜島出身でやはり唄三線が上手で
『小浜節』を聴かせてくれて鳥肌が立つほど感動した。
彼も恐らく旧盆で島に戻って来ているであろうと
姿を探してみたが見つけることは出来なかった。


『小浜節』は数ある八重山民謡の中でも指折りの名曲。
歌詞の内容は「島自慢」なのになぜかどこかしら
哀愁を帯びたメロディは一度聴くと耳から離れない。


  小浜(くもぅま)てぃる島(すぃま)や 果報(かふ)ぬ島やりば
  大嵩(うふだき)ばくさでぃ見りば 白浜(しるぱま)前なし


  <訳>
  小浜という島は、果報の島であるから
  大嵩を腰当てにして 白浜を前にしてよい島だ
  

唄に出て来る「大嵩(うふだき)」は島の中心にある小高い山。
小浜島は島の中心に向かってかなり傾斜があるので
大嵩に登るとその眺めは素晴らしい。
島全体が見渡せるのみならず周辺の島々を間近に観ることが出来る。
ただ急な階段が延々続く見晴し台への道はかなりキツい。
キツいだけに登り切って展望台で受ける風の心地よさといったら
それはもう唄のひとつも唄いたくなる、といったところ。


小浜島での宿は『かやま荘』。
かわいい(と言っては失礼だが)おばあさんが切り盛りする宿で
なんというか、なんとも言えずいろんなところが味わい深い。
この宿の名物はおばあさんの作るサーターアンダギーなんだそうで
食堂に置かれた寄せ書き帳には誰もが
「おばぁのサーターアンダギー最高だったよ〜!」
的なコメントを書いているのだが
1泊2日の慌ただしい旅ではクチに入ることは叶わず。
機会があれば誰か連泊してみて下さい。


ちょうど小浜島に泊まった日は皆既月食
名主さんの庭先で獅子舞が佳境に入っている頃
雲に見え隠れしながら月食は始まった。
素晴らしく神秘的な光景にしばし見入ってしまったが
島の人々は月食どころではなかったようで
激しく鳴り響く歌声、笛、太鼓、三線
渾然一体となって神秘的な夜空に溶けて行った。


宿に戻ってからはひんやりとした風が心地よいベランダで
月に照らされた島を眺めながらぼんやりとした。
海の向こうに石垣島の街のネオンが揺れていた。
ネコぐらいある巨大なコウモリが宿の庭先を
バッサバッサと行ったり来たりしていた。



小浜島の玄関。立派なのは「ちゅらさん」効果だろうか?



風情ありすぎの宿です。



小浜島風景。エリィもケイタツも居なかった…。



大嵩からの眺め。



祭りの風景。



小浜島の長老たちはどなたも品のいい風格をたたえていました。



盆の終わりを締めくくる獅子舞。