『ターン』(DVDで鑑賞)

主人公は27歳の女性。
交通事故に巻き込まれたと思って
目が覚めたら時計は前日に戻っていた。
まったく変わらない日常。ただし
自分以外に誰もいないことを除けば。
戸惑いながら繰り返される毎日の中で
ある日電話がかかってくる…。


というプロットがずっと気になっていて借りました。
主人公役の牧瀬里穂はデビュー当時すごく好きでした。
キリッとしていて透明感があって。
タケダ薬品の「ハイシーL」CMでデビューしたんだよな。
「好きです。元気でいてください。」ってコピーの。
そのあとJRのシンデレラ・エクスプレスのCMで大ブレイク。
でもワタクシ的にはタケダの印象のほうが鮮烈です。


で、映画のほうはそれなりに楽しめたんですが
牧瀬里穂のセリフ回しが彼女のデビュー作
『東京上空いらっしゃいませ』からまったく
変わっていないことにある意味感動。
どちらかというと棒読みで上手いとはいえないが
その棒読みのセリフ回しで必死に演技している感じによって
主人公の生真面目な正確を映し出している。
これ『東京上空〜』でも同じような印象だった。
しかしそのセリフ自体にもう少し
工夫が欲しかったのは脚本家の責任。
デビュー作は1990年。本作は2001年。
デビュー作はアイドル映画的作りに徹して
思いっきり気恥ずかしくもファンタジー仕立てだったのが
功を奏して臭いセリフも優しく包み込んで微笑ましかったが
相米慎二監督グッジョブ!)
本作はファンタジーに徹し切れず、かといって
リアルな作り込みもし切れず…という中途半端さが目についた。
そのへんがセリフにもにじみ出ていてかえって観ている人に
気恥ずかしい思いをさせてしまう。
牧瀬さんも今更アイドル扱いってわけにはいかないだろうし。
中村勘太郎倍賞美津子ともに好演。
中村勘太郎は『新選組!』の平助に見えて仕方なかった。


この映画の場合結末はもう最初からわかっているようなもんで
誰も意外に思わないだろうから
そこに至るプロセスを(とくに後半)もう少し丁寧に練っていれば
もっと素晴らしい作品になったのであろうに
そこが惜しまれるところではあります。
音楽とかももうちょっと練って欲しかったなあ…。
でも優しい小品、といった感じで評価は出来ると思います。
こういう映画は「自分だったらどうするだろう?」
と考えながら観るのが楽しい。
世の中に自分ひとりだけって状況になったら
たいがいのひとは気が狂うんじゃないかと思うけど
ひとってあんがいそう簡単に壊れたりしなかったりもするから
この映画の彼女が意外に冷静に見えるもの
あながち見当違いではないのかも知れません。


で、話はそれるけど『東京上空いらっしゃいませ』はかなり好きな作品。
川越がロケで使われており、当時川越に住んでいたというのもあり
また、あの頃の牧瀬さんホントにかわいかったからねえ。
そして作中使われていた井上陽水忌野清志郎の名曲『帰れない二人』。
この唄が流れるシーンは何度も観て涙したものです。
相米監督得意の長回しシーンでの牧瀬里穂の可憐さはハンパじゃなく
それだけでもこの映画の存在価値はあると断言します。
未見の方は是非どうぞ。


(※ここからネタバレあり)
面白いのは『東京上空いらっしゃいませ』が
死と生の境に立たされた少女が
死を受け入れて天国に旅立つまでの物語。
『ターン』は同じく死と生の境界に立たされた
おとなの女性が現世に生還する物語。
それを11年という時を隔てて
同じ牧瀬里穂が演じているというのは
偶然か意図したものかわからないけど
なんだか面白かったです。

ターン 特別版 [DVD]

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