『アマデウス ディレクターズカット版』(DVDで鑑賞)

扁桃腺炎のため夜飲み歩くのは控えて静かにDVD鑑賞。
今さらだけど「観落とし映画」筆頭の『アマデウス』。
何回も借りては何となく気後れして観ずに返していたが
やっと観ました。面白かった!
ディレクターズカット版は3時間と長いが
「映画は2時間まで」派のワタクシにも
まったくその長さを感じさせなかった。


天才、ウォルフガング・アマデウスモーツァルト
その才能の前に、自分の凡庸さを思い知らせ絶望し
彼の才能と、彼に才能を与えた神を激しく恨み
彼を亡き者にしようとするサリエリ
だが、「天才は天才を知る」の例えの通り
サリエリも決して凡人ではなかったのだと思う。
ただ俗人であったことは間違いない。
本当の天才は他人のことなどおかまいなしだ。
モーツァルトがそうであるように。
でも世の中の99%が俗人。あなたもワタクシも。
そう、みんなサリエリなのだ。


モーツァルトが目の前から消えたところで
彼を超えることも神が自分に微笑むこともない。
それを知ったときにサリエリの本当の絶望が始まる。
そしてその絶望により彼は狂人に成り果てる。
ものを作ったり表現したりする人間ならば
とくにサリエリの気持ちはよくわかる。
他人の才能、成功、名声を祝福する心を持てれば
自分にもまた神は微笑んでくれるはずなのに
サリエリはそのことに気づけなかった。
そこがサリエリの不幸だったのだと思う。


だが、落ちぶれて行くモーツァルトを執拗に追い続け
最後の瞬間まで見届けるサリエリ
モーツァルトの消滅を望みながら
同時にモーツァルトの一番の理解者であり
モーツァルトの楽曲を最も愛した人間であろう。
そこにこの映画の救いがあり同時に悲劇がある。
その裏腹の心の揺れをサリエリ役の役者さんは
見事に表現している。
本当に人間とは「業」の深い生き物ですよ。


実際のモーツァルトが映画で描かれたような
エキセントリックな人物かどうかは判らないけど
「天才」の描き方としては的を得ていると思う。
もうちょっと狂気じみた感じなのかなと思ったが
案外チャーミングに描かれていて
ちょっともの足りなかったけど。
松本大洋の漫画に出て来そう。ファンキー!


現在も多くの人に愛されているモーツァルト
この映画によれば生前はあまり幸福ではない。
死してのち名声を得る芸術家は何人も居るが
我が友人曰く
「そんなヤツはひと握りでほとんどの人はやっぱり
生きているうちにちゃんと評価されている」
…名言。


昨今、中世が舞台なのに現代風に
アレンジした映画をけっこう目にするけれど
本作はそうした軽薄さを極力避けて
(といっても相当前の作品だけど…)
重厚な中にしっかりとした人物描写を心がけていて
とても見応えがあった。名作!
まあ、今さらワタクシが勧めるまでもありませんが
未見の方はぜひ!

アマデウス ― ディレクターズカット スペシャル・エディション [DVD]

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