『刑務所の中』(DVDで鑑賞)

※ネタバレありです。
原作は漫画家の花輪和一さんが銃刀法違反で
実刑判決を食らって3年間ムショ暮らしした時の体験マンガ。
それを沖縄好きには『豚の報い』『Aサイン・デイズ』等で
馴染みの深い崔洋一監督が映画化。
多数の犯罪者を擁する刑務所が舞台となると
なんとなくギラギラかつ殺伐とした話に
なりがちな所だけどこの作品はそういうの一切なし。
なんだかありえないくらいのほほんとした刑務所の日常が
淡々と描かれていて微笑ましい。
個性的な役者さんが一同に介しキャラクターも
それぞれに立っていてオモシロい。
特に主役の山崎努は素晴らしい。
こういう役もやれちゃうんだなあ。器用な役者さんだ。


で、感想ですが
「刑務所内がこんなほのぼのしてていいのか?」
という疑問も浮かんで来てなんとなく釈然としない。
原作は未読なのでなんとも言えないけど
「刑務所もこんな感じに撮ると悪くないでしょ?」
というのがこの作品のメッセージなのだろうか?
それ以上のものが感じられなかったのだけれど
だとしたらなんだかもの足りない。
映画の中では誰も自分が犯した罪に反省していないし
「ムショを出たい!」という欲望もアラワにしない。
でもそれっていいの?いや、倫理的にいいか悪いかではなくて
みんなが「ここも悪くないな」と思っている刑務所なんて
おとぎ話にすらならないんじゃないの?って思うのだ。
規律が厳しかったり好きな物が食べられなかったりするけど
それだけにたまに夕食のおかずが豪華になったりすると
素直に感動したり厳しい規律の中にやりがいを見いだしたりして
けっこうみんな(とくに主人公)ムショ暮らしに満足している。
それはそれで笑いどころではあるんだけど
それだけじゃないだろう?って思う。
いや、実際案外あんなもんなのかも知れないけれど。
う〜ン、いや、どうだろ…わからん。入ったことないし。
ただ、最後までのほほんと終わってしまったことには欲求不満が。
その、のほほんの先にあるものが何かを観たかったんだけどなあ。
例えば(あくまでも例えば)主人公が刑期を終えて娑婆に出て
ラーメン食って「うめえ!」って言うだけでも
それは表現できると思うんだけど
あえて(かどうかわからないが)それをしなかったことが
なんとももの足りなく感じられた。
だって「のほほん」なだけなわけないじゃん!
オレはぜったいだまされないぞ!!
まあそういうツッコミをする映画じゃないんだろうけど。

刑務所の中 特別版 [DVD]

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で、映画は映画として原作を読みたくなった。
花輪和一さんは今昔物語など日本の古典を独特な解釈で
コミック化していて昔から好きな漫画家です。
かなりエログロな絵柄がナイス。
(好みの別れるところではありますが)

新今昔物語鵺 (アクションコミックス)

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