映画感想文『ゴールデンスランバー』

う〜む。


といきなり唸ってしまいますが。
役者さんたちは頑張っていたし
テンポも悪くなかった。
しかし全体的にリアリティが感じられなかったのです。


一番気になったのは
いろんな人が死ぬのに
それに対しての対応があっさりし過ぎているというところ。
最初に主人公の大親友が死ぬが
そのことが映画の中では
重要なこととして扱われない。
たとえ自分が無実の罪で終われる身となったとしても
親友が死んだらもっとオオゴトでしょう。普通。
そのほかにもさまざまな人が
死んだり殺されたりするけど
「ストーリー展開のため」
にあの世に行かされる感じがいただけない。


そして、全体的に理不尽な話なのに
その理不尽さに対する怒りがあまり伝わってこない。
ハリウッド映画だったら
主人公は超人パワーを発揮してでも
その怒りは事件の黒幕を暴く方向に向いたりするのに
この映画の主人公はそれをしない。逃げるだけ。
どうせファンタジーなら
そこまでやっちゃってほしかった。
いや、やるべきであった!
そうすれば


「リアリティなんてクソ食らえ!
スカッとしたからいいじゃん!」


って言えたのに。


そこが欠落しているために
すっきりしない中途半端な
ファンタジーに終始してしまう。
国家の巨大な闇みたいなものをチラつかせながら
全体としてはこじんまりまとまったオシャレ映画でしかない。
そこが非常に残念であった。
これなら最初から大風呂敷を広げずに
こじんまりしたところを舞台にすればよかったのに。


それから連続通り魔キルオの存在。
彼はいいキャラクターだったけれど
非常に都合のよい存在で
映画のリアリティを損なうことに貢献しただけ。
別の映画で会いたかったなあ。
ターミネーターみたいな永島敏行も同じ。
柄本明の存在も都合よ過ぎ。


それにあんなに放置されっぱなしだったクルマが
バッテリー換えたくらいで動くとは思えない。
そうそう、あのカローラが古すぎるがために
時代設定がいつだかわからなくなった。
オートバックスのおねえちゃんが
あんな古いカローラのCMソング唄えるとは思えん。
それからいくら警察でもあんな街中で
ショットガン乱射したら
今の時代大問題でしょ。
赤塚不二夫のマンガのおまわりさんかよ!と。


などなど、突っ込みどころも満載。
途中から、自分がもし追われる立場だったら
この映画みたいに都合よくみんなが助けてくれるだろうか
とどうでもいいような不安に駆られてしまいました。
映画の雰囲気は嫌いではないんだけどなあ。


あ、そうそう竹内結子さんはいい女優さんですね。


結論として
伊坂幸太郎原作作品としては
『フィッシュストーリー』
と同じような感想です(観たらわかります)。
せめて『アヒルと鴨のコインロッカー』レベルに
持って行ってほしかったなあ。