『The beat that my heart skipped』(フランス映画祭横浜2005より)

傑作!と思ったです。
一度は夢を捨て、荒れた生活をしている男が再び夢に挑む。
挑むのだが全然ヒトスジナワでは行かない。
父親との葛藤、母親の幻影、女、仕事、悪友…。
とにかく、すんなりと行かない。
でも人生ってそんなもんじゃないすか。
なっかなか思うとおりにいかないじゃないすか。
そういう、誰もが一度は経験したことがあるであろう
「うまくいかない」っぷりから来る主人公の焦燥感が
画面から見事にこちら伝わってくる。
主人公が挑む夢というのは「ピアニスト」になること。
ピアノという楽器の繊細さと
主人公のナイーブさがうまくリンクして
ピアノに触った経験のある人なら
大きくうなずいてしまうはず。
これ、バグパイプだったらかなり印象が違っていただろうなあ。
いや、バグパイプはステキな楽器ですが。
そしてエンディングの落しどころがまた秀逸!
主人公の人生もヒトスジナワではいかないが
この映画じたいがヒトスジナワではいかない映画だったわけで。
ホントにシビレマシタ。
エンドロールが流れる瞬間まで
緊張感を持続させながら観た映画なんて
何年ぶりだろうというくらいなもんでして。
主役のロマン・デュラスは
今回の映画祭でも他に2作品が来ているという
今売り出し中の若手らしく
とても繊細な役を見事にこなしていましたよ。
秋にアミューズCQNで公開が決定しているらしいので
是非観て欲しいなり!


ところでこの映画は、邦題は『真夜中のピアニスト』になるそうで。
けっこう映画のあとの質疑応答コーナーで客席から苦情が出ていました。
監督にそんなこと言ったってなあ…(笑)。
ワタクシ的にはそんなに違和感ないけど
『○○○のピアニスト』って確かに他にあるからねえ。
「文句言うなら邦題考えてくれよ」
っていう配給会社の嘆きが聞こえてくるような来ないような…。