『うたまーい〜昭和沖縄歌謡を語る』知名定男

沖縄民謡界で今もっとも脂が乗っているであろう方のひとり、
知名定男さんの著書を読み終えた。
戦後の沖縄民謡&歌謡界の先頭を歩いて来た人だけあって
その内容はまさに「昭和沖縄歌謡史」そのものといった充実振り。
ことに喜ばしかったのは、全編に渡って
知名定男さんの語りをそのまま文章に起こす形が取られてること。
それだけに時代時代の沖縄ミュージックシーンを
ご本人が目の前で、身振り手振りを交えて語ってくれるような
生々しさがあり一気に読めてしまった。
ただし、これはウチナーグチに馴染みがない人には読みづらいということでもあり
また、全く注釈などなく、いろんな人名や曲名が出てくるので(そのあたり結構乱暴)
沖縄民謡に対してある程度予備知識がないと
なんのことやらさっぱり、という本でもある。
まあそういう本があってもいいよね。
沖縄民謡入門的な本は他にもいろいろあるし。


そんなわけで一気に読み終えたこの本であるが
いろいろと目からウロコなところがあって面白かった。
大阪でうちなんちゅ二世として生まれ育った知名定男さんは
10代初めに父・知名定繁氏とともに沖縄に“密航”。
当時沖縄はアメリカの占領下にあったから
簡単に渡ることは出来なかったので“密航”したわけだ。
そこで登川誠仁嘉手苅林昌といった当代の名手と出会うワケですが
林昌さんに初めて会ったときの印象が
「ズボンのすそが短い人」というのが猛烈に可笑しい。
(わからない人にはゴメソなさい)
このふたりのオモシロエピソードや、ネーネーズの秘話、
ご自身の沖縄歌謡界での歩み、初期琉球フェスティバルの話など
沖縄民謡を愛する者にとっては肝ドンドンするような話がぎっしり詰まっている。
この本を読んでから、かの名人たちの音源を聴くと
その時代の、現場の息吹がよりリアルに伝わってくる。


個人的には登川誠仁さんの自伝が
ヤマトグチに訳されていたことを非常に残念に思ったので
(読みやすさという点では仕方ないことなのだが)
この本に関してはとっても読んでいて楽しかった。
知名さんの語り口をそのまま本にした出版社に拍手!
(多少不親切な点もあるがそれは愛嬌ということで)
沖縄民謡フリークには是非オススメしたい本であります。

うたまーい―昭和沖縄歌謡を語る

うたまーい―昭和沖縄歌謡を語る