『死ぬまでにしたい10のこと』

主人公は23歳の平凡な女性。
暮らし貧しくて楽ではないが
やさしい夫と幼いふたりのムスメに囲まれて幸せに暮らしていた。
そこへ突然死の宣告。
彼女は10の「死ぬ前にしたいこと」をノートに書き
それを実行しようとする。
この10の項目の中で、一番気になるのが
物語中でも大きな時間を割いている
「夫以外の人と付き合ってみる」ということ。
実際に彼女はそれを実行に移すが、
「おいおい、いい旦那がいるのになんちゅーことを」
と突っ込みたくもなります。
でも「死」を目の前にしても人間は欲深いし
17歳で旦那と知り合って
他の男と恋をするヒマもなかった彼女が
そういう願望を持つのは不思議ではないかも知れない。
だから彼女の選択も、アリなんじゃないかと思います。
ただ、「常識」的な行動ではないので、違和感は残る。
彼女のしたいことは、あくまで彼女が勝手にしたいと思っていることだし
それは彼女のエゴに他ならない。
でも、この映画はそのエゴを受け入れ、許しながら進んでいく。
そう、死を目の前にしたって
人間は「聖者」になるとは限らないしなる必要もない。
最期までナマナマしく「人間」であっていいんじゃないか
とこの映画は語っているように思う。
それがために単なるお涙ちょうだい作品になることを避けられたとも言える。


要所要所に挟まれる心象風景的な映像がとても美しく、音楽も柔らかくてよい。
サラ・ポーリーは大きな瞳の中にそこ知れぬ淋しさを宿している。
いい女優さんだなあ。
チャーリー・ワッツみたいなお医者さんと彼女のやりとりが
とても温かく優しくて好きなシーンです。


この映画を観た後、自分の「死ぬまでにしたいこと」を考えてみる。
彼女と同じように深夜のカフェでノートに書き込んでみるのもよい。
今日やってみよう。あとでカフェに行こう。
きっと「したいこと」というよりは「会いたい人リスト」になるだろうなあ。
うん、そんな気がする。


※DVDにて鑑賞

死ぬまでにしたい10のこと [DVD]

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